長野を去る・・・
私が地元を離れて一年半ほど経っていました。
流石に祖母が、寂しがっているとの事、それにぶらぶら瘋癲よろしく、収入も定まっていないのもよろしくないと、思うようになって来たのも、在りました。
マスター、ママにその旨告げ、帰るその日にひと悶着。
二人は叔父,叔母は普段それほど仲が悪い訳でもなかったのですが、叔母のほうが、私の帰郷に乗って、私の母すなわち叔母の姉に逢い行くと言い出しので、叔父との口論から、本格的に喧嘩へと発展していきました。
毎度の成り行きに、とばっちりを浴びないように、私は私で密か荷づくりを終え、逃げ出す機会を伺っていました。
喧嘩が頂点に達したころ、隙間ができた頃を見計らって、抜け出し茅野駅に向かいました。
手荷物のカバンひとつが全て、丁度三十分ほどで、名古屋行きのSLがありました。
そこで初めて重大な、それこそ致命的な欠如に気付くのでした。
ポケットの中には名古屋までの切符の、半額位のお金しかもっていないことに、その時初めて気づいたのでした、時すでに遅し。
もともと、店での給料らしきものは、貰っていませんでした。
小遣い程度は頂いていました。そんなに不自由はしませんでした。
帰ると告げた数日後に、国産の腕時計を頂いたのが、唯一。
もう、後に引けません、上諏訪までの切符を買って、SLに乗り込みました。
どうにかなるだろう。
どうにかなりました。
案ずるより産むがやすし、名古屋駅で、偶然団体客と出会わせ、その団体客に紛れ何と無く、駅の外へ脱出に成功。
当時の国鉄さん、ごめんなさい。・・・